犬の行動学:『Safe Haven(安全地帯)』のすすめ

皆さん、『Safe Haven』という言葉聞いたことありますか?日本語に訳すと『安全地帯』とういうころでしょうか。

この『Safe Haven』というアイデア、イギリス・リンカーン大学の教授であり動物行動学専門医であるダニエル・ミルズ獣医師の『犬の音に対する恐怖症:するべきこと・するべきでないこと』という講義の中で環境エンリッチメントの一環として紹介されていて興味深かったので紹介します。

毎日の生活の中、犬にだってイライラする時、カーッとなる時、恐怖を感じる時、一人になりたい時、リラックスしたい時、色々あります。犬ライフだって大変なんです。そんなストレスや不安への対処法、犬それぞれ違います。全く動じない子、我慢する子、飼い主に甘える子、隠れる子、パニックになる子、物を破壊する子、攻撃的になる子、本当に10犬10色です。でもそんな時、『安全・リラックスできる場所に逃避する』という選択肢があるのっていいと思いません?

safe haven
この『Safe Haven』というアイデアはまさに、犬に『Safe Haven』という安全地帯へ行く・逃げる『選択肢』を与えてあげようじゃないかという考え。

ここでポイントなのが、『Safe Haven』『選択肢』であるという点。

飼い主の仕事は『Safe Haven』という環境を作り、犬にこんな選択肢もあるんだよと教えてあげること。そして犬に選ばせてあげること。

『Safe Haven』へ行くか行かないか、それを決めるのは犬自身。

犬にとって『Safe Haven』とは?

  • ポジティブな感情・出来事と結びつけられる場所
  • どんなことが起ころうが絶対に安全と感じられる場所
  • 誰にも邪魔をされない場所
  • 完全にプライベートな空間
  • リラックスできる場所
  • 自分で感情をコントロールできる場所

 

実際にどうするの?

Step1:『Safe Haven』となる場所を選びましょう

  • 犬が普段くつろいでいる場所、お気にに入りの場所の中から一箇所『Safe Haven』となる場所を選びましょう
  • できれば人の出入りが少ない場所、静かな場所がいいでしょう

注意
犬が恐怖を感じた時に隠れる場所がある場合、そこは絶対選ばないこと!
そのような場所は 『Safe Haven』とは別の『駆け込み寺』としてそっと残しておきましょう。 

Step2:『Safe Haven』の環境を整えましょう

  • お気に入りの毛布やベッドを『Safe Haven』にセッティング
  • 毛布やベッドだけでも十分ですが、ケージに毛布をかけて小さな部屋を作ってあげると喜ぶ子が多いのでオススメです
  • ポジティブな感情・出来事と結びつけられるよう、『Safe Haven』でご飯をあげたり、こっそり大好きなおやつやおもちゃを隠し、犬に『嬉しいサプライズ』を

 

Step:3『Safe Haven』のルールを守りましょう(一番大切!!!)

  • 罰として『Safe Haven』を使わないこと
  • 犬が怖がっている時に無理やり『Safe Haven』へ誘導しないこと
  • ケージのドアは絶対に閉めないこと。『Safe Haven』への出入り、決定権は犬にあります
  • 犬が『Safe Haven』にいる間は撫でたり触ったりしないこと。『Safe Haven』は完全プライベートな空間です。
  • 物理的な力で犬を『Safe Haven』から引っ張りださない(緊急時の場合は例外)

補足

*ゲストにも子供にもしっかり説明してルールを守ってもらいましょう。小さな子供には『Safe Havenに入ると△△(犬の名前)は透明人間(犬)になっちゃうんだよ。』などと言うと受け入れられやすいようです。また、子供が小さく説明ができない場合は、周りの大人が絶対に子供から目を離さないこと。

#物理的な力に頼らず、呼んだら犬が自分から来てくれるのが理想的。『Safe Haven』から出てきてほしい時、呼ぶだけで出てきてくれるよう『しつけ』『トレーニング』『遊び・運動』などを通して『犬との信頼関係』を築く努力を忘れずに! 

 

『Safe Haven』は人間のためのトレーニング

『Safe Haven』というアイデアと概要を見聞きして思ったこと。。。

これは私たち人間が『犬の気持ち・個性を尊重する』ためのトレーニングではなかろうか。。。

私たちだって、自分の気持ちや個性を尊重してくれる相手がいると自信がつき、心に余裕ができますよね。また、失敗や嫌なことに対する恐怖心もかなり抑えられると思います。これは犬も同じです。

『絶対的に安心できる場所がある』『自分のことを信頼・尊重してくれる相手がいる』ということほど心強いものはありません。愛犬にそんな場所・存在を与える努力をすること。飼い主としてとても大切な責任ではないのでしょうか。そして、『犬とお互いを信頼する・尊重する関係』が築けた時、犬との生活がさらに楽しくなるのでは!

 

参考資料: THE SAFE HAVEN: The Clinic Team, University of Lincoln Animal Behaviour Clinic




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUTこの記事をかいた人

香川県高松市出身 地元香川の高校卒業後、ニュージーランドでの語学留学・大学進学準備コースを経てオーストラリア・メルボルン大学獣医学部に進学。現在イギリスで臨床獣医師として働いています。