動物愛護先進国と言われているイギリスですが、動物を取り巻く法律が古過ぎたり複雑すぎたり、暗黙の了解とされて法で規制されていない事柄があったり、法が緩すぎることなど、まだまだ問題山積みです。
イギリスではここ数年、動物福祉の基準を改善する政策の一環として、ペットショップでの犬猫の販売・オンライン販売への規制、ブリーダーへの規制強化などに関する法案が議会で頻繁に審議されてきました。

その先駆けとして、10月1日からはペットショップなどで生後8週間未満の子犬や子猫の販売が禁止され、ブリーダーのライセンス制度やオンライン販売者の透明性(ライセンス番号の表示等)が強化される予定です。
そしてつい最近、長年なかなか具体的な法改正が行われないまま取り残されていた『ペットショップなど第三者販売業者による子犬・子猫の販売』に関して大きな動きが!
第三者販売業者による生後6ヶ月未満の子犬・子猫の販売禁止
先月8月22日、イギリス政府からついに、、、ペットショップなど第三者販売業者による子犬や子猫の販売を禁止する方針が発表されました。
この方針が実行されると、生後6カ月未満のペットを迎え入れる場合、ブリーダーまたは動物保護施設と直接やりとりを行わなければなりません。

認可を受け、自分たちで繁殖した犬猫ではなく、他者によって繁殖された犬猫を販売する業者。代表的なのがペットショップですが、ブリーダーから犬猫を仕入れ売買を仲介をするディーラーも第三者販売業者に含まれます。
パピーファームと保護犬ルーシーの存在
今回の方針発表の背景には、劣悪な環境でペットを繁殖させている悪質業者や悪質ブリーダーの存在があります。
中でも、ルーシーという名の犬の存在はこの方針実現に大きな影響を与えました。
『第三者販売業者による子犬や子猫の販売禁止する法』は別名『ルーシー法』と呼ばれるほど!
ルーシーとは?
ルーシーは繁殖用の犬として、パピーファームの劣悪な環境下で飼育されていました。
2013年、ルーシーは5歳の時にリサさんという女性に救出されるのですが、狭い檻に入れらていた影響で背骨や骨盤は変形し、救出された際は真っ直ぐに立つことも出来ない状態でした。また、極度の栄養失調で体重はわずか3.5kgしかなく(通常キャバリアは6−9kgくらい)、てんかん、慢性的なドライアイ・皮膚炎、といった様々な健康問題も抱えていました。そして2016年に他界。
ルーシーは生まれてから引き取られるまでの5年間、パピーファームで地獄のような生活を強いられましたが、最後の3年間は優しい飼い主に可愛がられ、たくさんの人に愛されて暮らすことが出来ました。
ルーシーのBefore・Afterルーシーを引き取った飼い主リサさんは、ルーシーの様に非人道的な扱いを受けている犬猫を少しでも減らせるように、一人でも多くの人にペット売買の裏で起きている悲惨な現状を知ってもらおうと、SNSを通してパピーファームや繁殖業者の撲滅を訴えてきました。
パピーファームの撲滅を訴えるメッセージカードを持ったルーシーの写真は多くの人の目に止まり、心を動かし、ルーシーはパピーファーム撲滅運動支持者の中ではかなりの有名犬に。
『ルーシー法』キャンペーンの発足
ルーシーの死後、リサさんは著名獣医師マーク・エイブラハム氏をはじめとする著名人、有力者、多くのサポーターたちの協力を得て、第三者販売業者による子犬子猫の販売禁止する運動『ルーシー法』キャンペーンを発足
『ルーシー法』キャンペーンの署名運動には15万人近くが賛同し、今年5月には国会での審議にこぎつけ、8月22日『第三者販売業者による子犬子猫の販売禁止』が政府の方針に組み込まれることが発表されました。
『第三者販売業者による子犬子猫の販売禁止』の影響力は?

ペットショップの一部を含む認可を受けた第三者販売業者の数は、イギリスでは100に満たないと考えられており、ブリーダーの数や、実際に存在するペットショップの数と比べると決して多くありません(Pet industry Federationによるとイギリスには3500ほどのペットショップがあると言われています。)。
ですが、動物愛護団体Blue Crossは、英国全体で毎年約4万~8万匹が第三者業者を通じて販売されていると推計しています。
『影響を受けるのは100にも満たない業者のみ?』
『100にも満たない経路からそんな数の動物たちが?』
と思うかもしれませんが、4万ー8万匹のやり取りの中には認可を受けていない違法な仲介業者・ディーラーによるものも多く含まれていると考えられます。
そのような違法な第三者販売業者も含めて法律で規制するというのが『ルーシー法』の狙いなので、実際に影響をうける業者や悪質ブリーダーは想像よりも多いのではないかと予想されます。そして、そうであって欲しいと願います。
ただ、このような違法ディーラーたちはなかなか厄介です。。。
第三者業者であるにもかかわらずブリーダーのフリをしていることは日常茶飯事
自分がまさか違法な第三者業者から子犬や子猫を購入したと思っていない、気づいていない飼い主さんもたくさんいると思います。
なので、『法律上禁止です!』と言ったとしても、消費者が自分がやりとりしている相手が違法業者や偽ブリーダーだって気付けなければ意味がない。
また、良質なブリーダーのフリをしたパピーファームや悪質ブリーダーたちもたくさんいます。
そして違法行為を違法だと気づかせないために、彼らも今まで以上に策を練ってくると思います。
なので、今まで以上に消費者の知識、冷静に状況を判断する能力、良質なブリーダーと悪質・偽物ブリーダーを見極める能力、そして何かおかしいと思ったら立ち去る覚悟が求められていくと思います。
このように動物を取り巻く問題は『法改正=問題解決』とはいかない複雑な問題。。。
ですが、今回の方針発表は動物福祉の向上に向けて大きな一歩になったのでは!と思います。
2020年4月6日、『ルーシー法』無事に施行されました!
参考ページ
▶︎ A ban on the commerical third-party sales of puppies and kittens in England
▶︎ Puppy and kitten farming to be banned
▶︎ The government have announced a consultation on a ban on third party puppy and kitten sales in England
▶︎ WHAT IS LUCY’S LAW?
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